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システム手帳を生んだ英国のブランド「ファイロファックス」は、85年に渡って伝統を守り続けながら魅力あふれるモデルをつくり続けている。その歴史をたどりながら、個性あふれる最新モデルの魅力に迫ってみよう。
PHOTO/米山信義 Yoneyama Nobuyoshi
取材・撮影協力/日本シイベルヘグナー
ファイロファックスの誕生と歴史

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1918年に第一次世界大戦が終結。この2年後の1920年からファイロファックスの歴史が始まる。きっかけは英国のひとりの軍人の発想だった。陸軍大佐だったディズニーがアメリカでルーズリーフ式のバインダーシステム式のノートの存在を知り、サンプルを持ち帰ってくる。そして彼は軍事上の機械、科学、医療などの様々な分野の情報に対応できる情報処理システムとしてバインダーシステムの製作をウィリアム・ラウンスに依頼。ラウンスはディズニーの友人で印刷とステーショナリー販売の会社を経営していた。翌年ウィリアム・ラウンスとポスィーン・ヒルの2人によってノーマン&ヒル社が設立される(ノーマンはラウンスの息子の名前で、これを社名に使った)。
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完成したシステム手帳にファイロファックスと名付けたのは、ラウンスの臨時秘書をしていたグレース・スカーだ。彼女は当時、自分が使っていた手帳を「File of Facts(真実の手帳)」と呼んでいた。これを短縮してFilofaxを考え出したのだ。ちなみにfaxはファクシミリの意味のほかに、factsと同じ「情報、真実」という意味もある(ファイロファックスは1926年に商標登録されている)。
1930年代になるとファイロファックスの得意先は増え、またグレースの尽力によりメールオーダービジネスも確立されはじめる。この頃からラウンスの息子ノーマンは、ノーマン&ヒル社の後継者として期待されていたが、1939年から始まった第二次世界大戦のためアフリカ戦線に徴兵。1942年にノーマンは戦死してしまう。ノーマン&ヒル社も戦禍をこうむっていた。
1940年12月29日、ロンドンはナチスによって大空襲を受け、セントポール寺院近くにあったノーマン&ヒル社のオフィスは崩壊してしまうのだ。ほとんどが無となってしまったなか、唯一グレースが毎日自宅に持ち帰っていた一冊のファイロファックスだけが残っていた。メールオーダーをするための顧客名簿を毎日更新してがファイリングしていたのだ。彼女は会社の再建に奮闘する。大空襲からわずか10日後、グレースはタイプライターを購入し、彼女のファイロファックスに残された住所をもとに顧客に手紙を発送。そこには「会社は爆撃で炎上したものの、リフィルの生産はつづけています。いつでも注文してください」と書かれていた。グレースは後に社長となり、退任後もチェエマンとしてファイロファックスの普及に努めることになる。
当時のファイロファックスの主なユーザーは、軍人と牧師だった。どちらもオフィスを持たず、外で働くプロフェッショナルであり、彼らの携帯用オフィスとして活用されていたのだ。戦地からの注文も多く、ノーマン&ヒル社のサービスに対して連合軍の中尉ロバートソン・クック(遠征隊統治本部)からの感謝状が贈られている。また終戦直後には銃弾が革の表紙に食い込んだ跡を残したファイロファックスが修理に持ち込まれている。持ち込んだのはノルマンディ上陸作戦(1944年)の連合軍の将校だった。頑丈な革カバーにたくさんのリフィルを詰めたバイブルサイズのファイロファックスが彼の命を救っていたのだ。 |
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1950年代、グレースの後継者となったのは戦死したノーマン・ラウンスの従兄弟ジョー・ライダーだった。この頃には軍人や牧師以外にも顧客は拡大していた。1976年、イギリスとネパール陸軍の合同登山隊がエベレスト登頂に挑戦。このときのデータブックとしてファイロファックスが装備のひとつに加えられている。登山隊は海抜8000メートルを超える氷河という厳しい自然の中でもシステム手帳がきわめて優れたものであったことを称え、ファイロファックスにデータを記入している隊員の姿とともに、報告書をノーマン&ヒル社に送っている。
1980年、ジョー・ライダーはデイビッド・コリションに会社の経営権を譲渡する。コリションは古くからのファイロファックスのユーザーでもあり、メールオーダーでファイロファックスの販売をしていた。1974年にダイレクトメールによる代理店ポケットファックスを興し、ファイロファックスの最大の販売会社となっていた。社長となったコリションは、ファイロファックスの潜在的な能力を引き出すためのアイデアを次々と発想。現代のビジネスにふさわしいカードホルダーやどんとフォーゲットなどの新しいリフィルを開発し、その後会社の規模を急成長させる。現在では、ファイロファックスは単なる商標にとどまらず、ルーズリーフ式のシステム手帳を総称する代名詞として世界じゅうに知れ渡っている。
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