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出会いとは不思議なもの。たった1度の出会いが、その後の人生に大きく影響していくことも少なくない。東京都・墨田区にある「楓岡ばね工業」の代表、楓岡弘光さんもそのひとり。昭和の時代から、精巧なバネを作り続ける工場の二代目だ。
遠い昔から、鉄素材のバネはなかったものの、それに似た形のものはあった。「お茶くみ人形」などは、クジラのひげをぜんまい代わりに使っていたという。バネというのは、見えない部分だが、分解してみると、たいていのものに入っている。そんな裏方だったバネに、あるときスポットが当たる。
墨田区が行っている地域産業振興のひとつ「モノ作りの会」は、楓岡さんをはじめ、桐雑貨、ガラス、飾り金物、江戸小紋染め、飴、屏風……といった墨田区在住の職人たちが集まり、共同で商品開発や展示販売などを行っている異業種グループ。さらに、多方面で活躍しているデザイナーや技術者との親交も深めている。
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楓岡さんと「hane ペーパーホルダー」 |
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工場で図面をはさむマグネットクリップ |
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マグネットクリップとペーパーホルダー |
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hane ペーパーホルダー \1,890 |
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「多くの人に伝統工芸を知ってもらい、新しい形となって発信できればいい」と楓岡さんが言うように、ここに集まる人たちの根底にあるのは、「モノ作りが好き」ということ。自分たちの伝統技術に、新しい息吹を吹き込み、まったく違ったものを生み出す。
楓岡さんの「hane ペーパーホルダー」も、そこで出会った工業デザイナーとの共同開発によって生まれたものだった。デザイナーが、工場で普段何気なく使っていた図面をはさむマグネットクリップに目をつけたのだ。
しかし、開発にあたっては、いろいろと試行錯誤があったようだ。
バネが、最大限の力を発揮するためには、緻密な計算が必要になってくる。手巻きの作業も、もちろん多い。そこで気がかりだったのが、機械でどこまで作れるかということ。それと、商品が出来上がってからも苦労は続く。まったく違う業界で売るための販路を探すことには並々ならぬ努力を注いだ。
慣れないスーツを着て、渋谷や青山あたりのショップに飛び込み営業をした。しかし、何軒か回っているうちに、「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」のエージェントから打診がきたという。そして約半年後、本格的にMoMAでの取り扱いが決定した。繊細で美しい曲線は、日本の技術だからこそできた技。扇をイメージさせるその形は、「和を感じる」と、海外では大好評だった。末広がりで、縁起がいいという外国人も多かった。大成功だ。
そして、今年、東京下町発のバネ雑貨が、またMoMAに並ぶ。前出の「モノ作りの会」が、2002年に行ったギャラリー展に試作品として出した「スプリング・クロック」が、ようやく形になったのだ。これもまた、他の工業デザイナーとの異色のコラボレーション。 |
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| 「出会いは大事。いろんな人の意見を聞くことで世界が広がっていきます」と言う楓岡さんの話を聞いていると、良いモノ作りは、良い友作りでもあるような気がしてならない。「若い人たちにも、モノ作りの世界に来て欲しい」と、社会科見学や体験学習なども行っている。また、服飾学校の生徒が「バネをファッションモードに使いたい」と尋ねて来たりしたこともある。幅広い年齢層とのコミュニケーションを大事にしている。
これからは、今の仕事ももちろん続けながら、バネを使った雑貨の開発にも力を入れていくという。
最後になったが、「バネ」とは、「はねる」がなまったものといわれる。楓岡さんのブランド「hane」は、そこから名づけられた。その名のとおり、影の力持ちが、こうして世界に羽ばたいていく。まるで、自分の子どもを嫁に出すような楓岡さんの優しい目が印象的だった。
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「スプリング・クロック」の試作品 |
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楓岡さんの工場 |
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