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品書きには湯豆腐しかありません。
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観光地の嵐山にも昔ながらの風情が残る
お目当ての湯どうふ屋は、嵐山の天龍寺境内と隣り合わせ。市内の細い道を軽々とターンしながら「ドラッグスターで来て良かったナ」とつくづく思う。両足がベッタリと着くシート高の低さで、ふと気になる場所を見つけてはバイクを気軽に止められるからだ。
ところで嵐山はご存じの通りメジャーな観光地。渡月橋の袂は、東京は原宿の竹下通りを思わせる、若い女性向けの店で賑わう。
とはいえ、そんなエリアは数百メートルだけ。桂川の上流側や天龍寺へ続く路地裏は、昔ながらの落ち着いた京都の佇まいだ。
この一角に、何軒かの湯どうふ屋がある。ボクのレース時代からの親友で、いまはバイクディーラーを経営する生粋の京都っ子、糟野君に何度か連れてきてもらったので、中でも現代的に洗練された店ではなく、いかにも昔ながらの店構えを選んだ。
五十年近く続く嵯峨どうふ一筋の趣
その西山艸堂は、天龍寺の塔頭(大寺の内にある小院、脇寺)のひとつ知恩院の中にある。門をくぐると天龍寺への参道に出る近道にもなることから、気軽に通り抜けて良いという立札があり、風情溢れる庭園に囲まれている。
庵の入り口で声をかけると、庭の縁側から座敷に上がるよう言われる。座敷は襖でいくつかに仕切られ、七輪を真ん中に据えた丸い卓袱台がズラリと並んでいた。
午前11時半〜午後5時までの、昼間だけの営業で、やはりお昼どきが一番混み合う。品書は湯どうふ定食のみ。他の店だといくつかバリエーションがあるが、ここは湯どうふに徹している。
運ばれてくる土鍋は、炭火の七輪にかけられ、昆布だしの中には本場の嵯峨どうふがたっぷり入っていた。それに前菜が三種。豆腐の寿司に胡麻豆腐と雁擬、さらに生湯葉、山芋、シシトウなど季節野菜の精進揚げが色を添え、ご飯が最後に運ばれる。
これをゆっくりと時間をかけながら口へ運ぶ。縁側の向こうの庭園を眺めながら、急がず慌てずの京都時間を愉しむのだ。
淡泊なようで、意外なほど味の深い嵯峨どうふ。不思議なもので、大した量ではないと思っていても、食べ終わると満腹感に浸れる。いつもどれだけ急ピッチで食べているかがわかろうというもの。
わざわざ京都まで走ってきた甲斐がある、そう実感できる非日常の味わいが五感に充填できた。
■写真
京阪地方では飛竜頭(ひりょうず)と呼ばれる雁擬、胡麻豆腐、豆腐の寿司(港揚げのお寿司)に生湯葉や山芋シシトウなど季節野菜の精進揚げが添えられ、湯どうふの素朴な味わいを引き立てる。これにご飯がつくので食事として充分なボリューム。
「西山艸堂(にしやまそうどう)」
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町63
TEL075-861-1609、営業時間/AM11:30〜PM:5:00
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風の向くまま山寺巡り、心が深呼吸をはじめます。
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午後は山寺の散策静けさに心を休める
京都にはいうまでもなく数多くのお寺がある。メジャーな大寺院も良いが、周囲の山寺にあてもなく出かけると、古都のもうひとつの風情に浸ることができる。
今回は西国二十番札所で松の寺で知られる善峰寺へ寄ってみた。善峰寺は西京区の長岡天神から釈迦岳へ急な坂を上ると、山の斜面に切り立つように山門と境内がある。三百年以上経つ山門や観音堂、それに塔やいくつものお堂があり、中腹には遊龍の松と呼ばれる、横に40m近く伸びた樹齢600年の珍しい松が横たわる。
平地の広々とした境内と違い、階段で結ばれる緑濃い風情に、風の音さえ遮るような静けさがあたりを覆う。時間が止まったかのような空間に身を置くと、呼吸する度に絡み合っていた糸がほぐれ、シンプルな状態に組み替えられていく、そんな気持ちになる。
山を下りる道すがら、光明寺にも立ち寄った。こちらは大きな境内で、参拝する人が途切れることもない。しかし、静かだ。この静寂を壊さないよう、誰もが気を配っている、そんな気がするほど落ち着いた空気が支配していた。
京都らしさは日が暮れて一層濃くなる
心洗われる時を過ごし、このまま帰るのが大人……しかし凡人たるボクの心は、日暮れと共にうまいもん探しに欠かせない酒を求めて疼きだした。京都に来て、飲まずに帰るわけにはいかない。
向かうは先斗(ぽんと)町、久しぶりに一兆を訪れる。ここには全国の選りすぐった銘酒が並び、カウンターに座るとその日の気分を伝えるだけで、次々と銘柄を変え盃を満たしてくれる。
どんな酒を飲みたいか、知識がなくてもご主人が好みを探り当ててくれるから、こちらはひたすら飲んでいれば良い。その銘柄の由来や特徴などを聞くにつけ、味わいもそれだけ深まろうというものだ。しかも銘酒というものは、喉ごしが良いだけでなく、酔い醒めも爽やか(もちろん過ぎたるは、だが)という安心感もある。
つくづく人には、充填の時間が必要だと思う。日常の心の消耗を取り戻す時間を、たっぷりと取る大切さがボクにはわかっていなかったのかも、いつの間にかそんな風に思う自分が愉快だった。
もっと京都らしさを、ほろ酔い加減で足は宮川町に向かう。いきなりお座敷というわけにはいかないが、お茶屋さんの経営するお店を覗けば舞子さんに会えるかも。こうなると、京都に遊び人の知り合いが居ることが最大の武器だ。友達は大事にしなきゃ。
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東京ICから京都南ICの、480kmをノンビリと走る
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東名と名神といえば日本の大動脈。不況と大手トラック便がJR貨物に振り替えても、交通量は途切れない。名古屋まで中央高速というルートもあるが、サービスエリアに短区間で立ち寄るには東名のほうが施設数も多く楽しめる。 |
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「ネモケンのうまいもんツーリング」
定価:683円(税込)
ライダー人生43年。バイクを愉しむ雑誌「培倶人」のプロデューサー・根本健が自らバイクを走らせて探し当てた極上の「うまいもん」と情緒あふれる旅を掲載。 |
「日本の秘境ツーリング」
定価:683円(税込)
観光名所にコッソリ潜む「トホホスポット」……
ミュージシャン、タレント、そしてライダーと多彩な顔を持つ末飛登が、「秘境」を求めて日本全国を駆け抜ける!
培倶人の大人気連載「日本一を探す旅」から珠玉の旅をセレクト!
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