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趣味side/北欧デザインと共に暮らす

Vol.054/ナンナ・ディッツェルの椅子【トリニダード・ベンチフォアツー】

生涯現役という言葉がもっとも似合うデザイナー、ナンナ・ディッツェル。彼女は1923年にコペンハーゲンで生まれてから2005年にその一生を終えるまで、常に精力的なデザイン活動を続けてきました。優れた観察眼から生まれる彼女の作品には、ユニークなデザインと北欧ならではの機能美の融合を見ることができます。

たゆたう蝶のような「ベンチ・フォア・ツー」

33歳にしてデザイン界のノーベル賞と呼ばれる「ルニン賞」を受賞しているナンナ・ディッツェル。彼女の非凡さは、優れた観察力にあるといえるでしょう。「常に注意深く周囲を観察し、心に残るものを時間をかけて熟成させ、目的と条件の下に組み立てる」というナンナの言葉は、彼女のデザイン哲学をよく表しています。

代表作である「ベンチ・フォア・ツー」では、その力が遺憾なく発揮されています。鮮やかなカラーが印象的なこの作品のモチーフとなっているのは、蝶がたゆたう姿。その美しさを表現するため、ナンナは長年にわたって蝶を観察し、この流麗なデザインを生み出したといいます。見るものを惹きつけるベンチ・フォア・ツーは、彼女のデザインを象徴する作品といえるでしょう。

北欧デザインと共に暮らす

ちなみに、背板と座板に使われているのは航空機用の薄い合板。軽くて強度があるこの素材は、ベンチ・フォア・ツーの魅力を一層高めています。木だけではなく、さまざまな素材を用いるのも、ナンナ作品の大きな特徴です。

デザインと機能を融合させた「トリニダードチェア」

北欧デザインと共に暮らす なかでも高い評価を得ている「トリニダードチェア」は、機能とデザインを見事に融合させた作品。1993年にデザインされたこの作品は、デンマークの優れたデザインプロダクトに贈られる「ID賞」を受賞しています。

トリニダードチェア最大の特徴は、背面と座面に施された透かし彫り。椅子に光が差すと無数の陰影が生まれ、美しく幻想的な空間を作り出します。一見しただけではわからないこの仕掛けに、ナンナの豊かな感性が表れているのでしょう。

また、スタッキングができるようになっているのも注目したい点。重ねればスペースをとらないので、コペンハーゲンのカストラップ空港をはじめとする多くの公共施設で重宝されています。さらに足がメッキになっているアウトドアタイプも用意されているので、用途に合わせてさまざまな使い方ができるのも魅力。使い手のことを真摯に考えて生み出された機能が、この作品には備わっています。

ナンナにもっとも大きな影響を与えたのは、デンマーク近代家具デザインの父と呼ばれるコーア・クリント。「デザインに一番重要なことは機能、その上に人間らしい感覚を結晶化させることだ」というクリントの言葉は、彼女のデザインに対する姿勢を決定づけました。ナンナの作品には、先人のデザイン哲学がしっかりと反映されているのです。


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