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自転車:シェアザロード 〜クルマと自転車が共通認識で走れる道を〜

警察庁は“パンドラの箱”を開けた!!


我々が危惧していた「自転車車道締め出し法案」から一転、警察庁は「自転車は車道」と一気に方向転換を表明。その内容と警察庁に対する質問の回答を紹介しよう。

にわかには信じがたい「一大方針転換」

平成一九年二月七日は、私にとって忘れられない日になった。

「事件」の現場は衆議院第一議員会館第一会議室。自転車議連の総会の中、警察庁のコアな官僚3人を招いて「道交法改正案」の内容を説明していただく、というイベントが行われたのである。私ヒキタはNPO法人「自転車活用推進研究会(略称・自活研)」の理事として臨席が認められた。

正直申し上げて、私は武者震いするほどの緊張感と臨戦感の中にいた。この日のためにアタマの中で論戦のシミュレーションを繰り返し、いくつもいくつもの想定問答を用意してきたのだ。

ところが驚いた。事前にそれらしき情報は伝わってきていたとはいうものの、警察庁の3人(喋ったのは2人)は、清々しくも、誠実なまでの方針転換ぶりであったのだ。

出席したのは、矢代隆義交通局長以下、横山雅之交通企画課長と、早川治交通安全企画官。矢代局長が概括的なポリシーの説明をした後、主に横山交通企画課長が細かい部分の説明をしていった。

一言でいうなら、警察庁はこの席で「自転車は、歩道通行から車道通行へ」の一大パラダイムシフトを披露したのである。

中でも私が驚いたのは、次の三点だった。

■自転車の歩道通行要件の見直し
 道路標識などにより通行可とされている場合のほか、
 *児童・幼児などが運転する場合
 *危険を回避するためやむを得ない状況である場合
 に限り自転車の歩道通行を認める
(警察庁文書「警察庁における今後の自転車対策の考え方」より)





警察庁の幹部から自転車活用推進議員連盟に対し「今後の自転車対策の考え方」について説明がなされた。矢代隆義交通局長(左)、横山雅之交通企画課長(右)
  さあ、どうだ。

これは「提言(昨年11月末)」→「試案(昨年12月末)」と経由して発表された警察庁文書の、現時点における最新版「考え方(今年2月)」からの抜粋である。

「児童・幼児」については、若干の疑義を孕みつつも、まあここではおいておこう。

問題は「*危険を回避するためやむを得ない状況である場合」の部分だ。これはいったいどういう意味なのだろう。

私はその点を問い質した。横山交通企画課長による回答は次のごとくである。

「*危険を回避するためやむを得ない状況である場合」については、試案にあった「車道を通行することが危険である場合」を、変更したもので、その具体的意味は、道路工事などの場合のあくまで限定された緊急避難的なものでしかない。

うわ、すごいじゃないか。「車道の危険」は、とりあえず「道路工事などの緊急避難的なもの」に限定されたぞ。これなら話はわかる。

二つ目にいこう。

■自転車通行に関するルールの周知とルール遵守の徹底について
 ○改正法・教則の内容について、チラシ・HP等により広報
 ○小・中・高校生に対して、学校と連携し、通行ルールや事故防止に関する安全教育を徹底
 ○運転免許保有者に対して、更新時講習等において、自転車の通行ルール、車道を通行する自転車に対しての留意事項などについて周知(以下略・同文書より)

「今までとどこが違うのだ」「ぬるいな」という突っ込みは、ココではおいておく。

これについて、私は次のように質問をした。

「大変失礼ではありますが、その前にいわゆる“白チャリ”のルール徹底が先ではないでしょうか。自転車乗車の警察官は、現在、歩道通行オンリー、しかも併走もありで、交通法規を無視してるように見えるのですが?」

対する回答はこうだ。

確かに、指摘されたような事実はあることを認めざるを得ない。我々としては、まずは内部教育を徹底し、現場で指導に当たる警察官には、ルールを遵守、原則車道を徹底させる所存。(横山課長)

この清々しいまでの認めっぷりは、どうだ。私は感動したぞ。警察庁はほんとに本気なのかもしれない。さらに三つ目。

■通行環境整備の例
 ○車線を見直し、車道の左側端に自転車レーンを設置(以下略・同文書より)

この項目の意義は大きい。なぜならこれまでの警察庁はどの会議でもどの席でも「車道に自転車レーンは作りません」と、強硬に主張し続けてきたからだ。議論がどちらの方向に向かおうと、また、どんなに欧州の例が持ち出されようと。

それが今回の警察庁の文書内に「車道の左側端に自転車レーンを設置」なのである。これがホントに警察庁の見解かと、私にはにわかに信じがたかった。

だが、その実効性はホントにあるのだろうか。私は次のように質問した。

「車道上の自転車レーン整備はいいが、そんなことが実現できるのですか。その前に違法駐車の排除についてはどうなのでしょう?」

これに対しての回答はこうだ。

昨年からの違法駐車対策の強化によって、違法駐車数はかなり減った。だが、現実としては地域差がある状態であるといえる。しかし、今後、取締を強化し、特に自転車レーン整備の際には、レーン上については、より厳しく、効果的な対策を行う所存。(横山課長)

ふーむ、特に「自転車レーンの整備の際」の部分が画期的である。

ちなみにこれらの回答は、みな質問を受けるとともに、即座に出てきたものである。以前の「木で鼻を括ったような」「はぐらかしばかり」の警察庁の説明とは、もう雲泥の差だ。




「自転車は車道を走るものと硬い信念を持って生きてきた」
(自転車活用推進議員連盟 谷垣禎一新会長)
今回の自転車活用推進議員連盟総会では小杉隆前会長から谷垣禎一新会長への引継ぎが発表された。就任の挨拶で谷垣会長は「自転車は生涯の友であり、還暦を迎えた今まで自転車は車道を走るものと考えてきた」といった旨を述べた
  質問項目以外のポリシー

文書の中にない、警察庁の説明を次にあげる。これは文書にはなっていないものの、公の席で明言されたものであり、公文書と同じ意味あいであると私は理解している。

●原則車道の自転車交通秩序の回復などの今後の対策については、時間はかかると思われるものの、警察庁は「腰を据えた対策」をとらねばならない。(矢代局長)

●幹線道路の(自転車)車道通行禁止などということはしない。それを推進する政策はとらない。(横山課長)

※ヒキタ註 これがつまりは今回の総会における「〈提言4 - 2 - 4〉にあたるものを法案には盛り込まない」という部分に当たる。なお〈提言4 - 2 - 4〉については、早川企画官が同月2日に「法案に盛り込まない」ということを、自活研に対して直接、明言している。

●計画的に通行環境を整備し、原則車道を徹底することの広報につとめる。(横山課長)

もう後戻りはきかない。警察は今や「自転車は車道」に大きくシフトしたのだ。

もう以前のように「車道締めだし」への心配は要らない。それどころか、現在の私が心配なのは、むしろ、あまりに理想的、針が逆に振れすぎて、「こんなことが実現できるのか?」「一般のママチャリ市民の理解を得られるのだろうか?」という点だ。

真面目な話、警察庁は「パンドラの箱」をあけてしまった。

だが、それは同様に「我々にとってのパンドラの箱」をも、あけられてしまったということなのである。

もしかしたら、今後、一部のサイクリストにとっては「以前の曖昧なほうがよかった」という局面が出てくるかもしれない。権利の当然として負荷される責任と義務ゆえに「以前より窮屈になった」ということになるかもしれない。

だが、それはいずれ必要なことだったのだ。

我々はとりあえず、よき自転車市民であらねばなるまい。ルールは確実に遵守だ。歩道暴走も、信号無視も、飲酒運転も、逆走も、もちろんアウト。世の人から「自転車はああだから」と後ろ指をさされないように振る舞わなくてはならない。これは今回の法改正にあって、前提とでも言うべきものだろう。



「パンドラの箱」の「パンドラ」たる所以とは?

さあ、警察庁にとって、これからはホントに大変だぞ。

しなくてはならないことは山ほどあるし、そのいちいちがこの日本においては極限的に困難な話なのだ。ちょっと考えてみただけでわかる。まずは自歩道以外の歩道からママチャリを車道におろさなくてはならない。これはつまり6割の歩道に対して実施されなくてはならないわけだ。

「自転車関連の法律」なんて一般にはまったく浸透していないから、警察官に「車道におりたまえ」と言われたところで「何、バカなこと言ってんのよ、車道なんて危ないじゃない、みーんな歩道を通ってるじゃない」と言われるのがオチだ。スーパーマーケットのまわりで交通警察官が途方に暮れる様子が、容易に想像つく。

それとは逆の事態もタマラナイ。つまり、数々のドライバーたちが「パパーッ(クラクション)、ふざけんじゃないよ、自転車が車道なんて邪魔だろが(怒)」と、怒り出す場合だ。これまた容易に想像がつく。

タマラナイのが、この30年の澱である。その澱に警察官は対峙しなくてはならない。何のことかといえば、次のような話。

「ナンデだよ、いつ決まったんだよ」
「○年の○月です」(いったい何年何月から施行になるんだろうなぁ)
「それまでと何が変わったんだよ」
「いえ、それ以前からも、自転車は車道が原則でした」
「それ以前からって、今までは自転車は歩道を走ってたじゃないかよ、なんでそれがいきなり車道なんだよ。今までは取締をしなかっただろうが。なんで今になっていきなりなんだよ」
「今までが間違っていたのです。それ以前は……、交通行政当局の怠慢でありました」

まあ、直接的にそんな会話にはならないと思うが、この会話の内容は、どうしたって、やはり事実だ。

また「車道の自転車通行の安全」を本気で考えるならば、車道左端の駐車車両を全撤去しなくてはなるまい。これはリアルな意味での「全撤去」である。となると、路上に荷さばきの場所も確保せざるを得ないし、駐車場の充実にも取り組まなくてはならない。建物のオーナーなどには「駐車場設置義務」も負荷せねばなるまい。猛烈な反発が予想できる。カネがかかる話だからだ。

駐車車両に対する取締りも強化、罰則も強化、さらにはイギリスやオランダのような監視カメラの導入にまで話は踏み込まざるを得ない。自転車に乗れない人のために都市内LRT(路面電車のようなもの)の整備ももちろんだ。ということは、財源の確保も急務ということになる。さらには都市内自転車の制限速度ダウン、場所によっては通行禁止にまで踏み込まなくてはならなくなるかもしれない。

一言でいうなら「自転車=車道」を実現するためには「クルマを冷遇すること」が必須になってくる。なぜなら自転車優遇政策はそのまま「過度のクルマ依存社会」を見直すことに繋がらざるを得ないからだ。その理論武装と周知徹底が必要だろう。

すべての困難を乗り越えるべく、国民への粘り強い「教育」もしくは「説得」にあたらなくてはならない。そのために「時間はかかると思われるものの、腰を据えた対策(矢代局長)」が必要不可欠になるわけだ。

パンドラの箱からはいくつもの「邪悪」が飛び出てきた。

今回の改正からも、いくつも飛び出てくるだろう。しかし、そのいちいちを粘り強く潰していかなくてはならない。

そして最後に残った「希望」。

その希望こそ、自転車によって初めて得られる果実、つまり「本来的にエコロジカルな交通社会」なのである。



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